こんにちは、ゼータです。
皆さんは歯医者で、
「フッ素を塗っておきましょうねー」
と言われたことはありませんか?

私は子どものころから歯医者に通っていましたが、昔は、
「フッ素って何なんだ?」
と思っていました。
「歯に塗るもの」
「虫歯を予防するもの」
というイメージはありますよね。
しかし、ここで一つ疑問が浮かびます。
そもそも「フッ素」って何?

今回は、そんな疑問からスタートして、歯医者で使われる「フッ素」について、化学の視点から解説します。
この記事でわかること
- 「フッ素」という言葉の意味
- 元素と単体の違い
- フッ素の単体「F₂」とは何か
- フッ化ナトリウム「NaF」とは何か
- 歯医者で「フッ素を塗る」の正体
- フッ化物が虫歯予防に使われる理由
① そもそも「フッ素」って何?
まず、「フッ素」という言葉。
これだけでは、「単体」を表してるのか、「元素」を表しているかわかりません。
「何を言ってるんだ?」と思ったそこのあなた。
「フッ素とは何か」を解説する前に、この「元素」と「単体」の違いについて説明します。
② 「元素」と「単体」は違う
ここは高校化学でも登場する重要なポイント。
元素と単体は同じものではありません。
元素は「種類」を表す概念。
一方、単体とは、
1種類の元素だけからできている物質
のことです。

例えば酸素。
「酸素という元素」と言った場合、
Oという元素の種類
を指しています。
一方、私たちが「酸素」と呼んで吸っている気体は、基本的に、
O₂
という分子からできています。
これは酸素元素だけからできているので、単体です。
つまり、
酸素元素 → O
酸素の単体 → O₂
という関係です。
「酸素が多い血液」と言ったりしますが、この使い方は元素ですね。

カルシウムのほうがわかりやすいでしょうか。
カルシウムという物質は金属です。
しかし、「カルシウムが豊富」と書いてある牛乳に金属は入っていません。
ただの異物混入ですね。
これはカルシウムイオン(Ca2+)のことを表しています。

このように、「元素」と「単体」を間違えると大変なことが起きます。
フッ素も同じ。
フッ素元素 → F
フッ素の単体 → F₂
となります。
ここで重要なのは、
歯医者でF₂(単体)を歯に塗っているわけではない
ということ。
つまり、「歯にフッ素を塗る」というときのフッ素は、「元素」としての言葉の使われ方です。
では、何を塗っているのでしょうか?
③ 歯医者で使われるのは「フッ化物」
ここからが本題です。
歯医者でよく「フッ素を塗る」と言いますが、正確には、
フッ素元素そのものを塗っているわけではありません。
歯科では、フッ化物を利用しています。
フッ化物とは、簡単に言えば、
フッ素を含む化合物などのこと
です。
そして、歯科で利用される代表的なものの一つが、
フッ化ナトリウム(NaF)
です。
名前から分かるように、
- ナトリウム → Na
- フッ素 → F
からできています。
つまり、
Na + F → NaF
です。

「フッ素」と聞いていたものの正体が、少し見えてきました。
④ フッ化ナトリウムは水に溶けるとどうなる?
ここで、もう一歩だけ化学の話をします。
フッ化ナトリウム(NaF)は、水に溶かすと、
Na⁺とF⁻
に分かれます。イオンですね。
つまり、
NaF → Na⁺ + F⁻
です。
この「F⁻」がフッ化物イオンです。
歯科でフッ化物を利用すると、このフッ化物イオンが歯の表面などに作用します。
ここまでを整理すると、
フッ素という元素「F」
↓
フッ素を含むフッ化物
↓
フッ化ナトリウム「NaF」
↓
水に溶けると「Na⁺+F⁻」
という関係になります。

「フッ素を塗る」という言葉だけでは分かりにくいですが、化学的に考えると結構面白いですよね。
⑤ なぜフッ化物が虫歯予防になるの?
では、なぜフッ化物が歯医者で使われるのでしょうか?
理由は、虫歯の予防に役立つからです。

歯の表面では、食事などをきっかけとして、歯のミネラルが失われる「脱灰」と、失われたミネラルが戻る「再石灰化」が繰り返されています。
フッ化物には、
- 歯の再石灰化を促す
- 歯を酸に溶けにくくする
などの働きがあります。
つまり、
フッ化物は歯を守る手助けをしてくれる
というわけです。
ただし、
「フッ素を使えば虫歯にならない」
というわけではありません。
歯磨きや食生活、定期的な歯科受診など、普段のケアも重要です。

⑥ 「フッ素」と「フッ化水素酸」は全く別物
ここで、少し怖い話をします。
1982年、東京都八王子市の歯科医院で、3歳の女児に本来使用するはずだったフッ化ナトリウムではなく、フッ化水素酸を誤って塗布してしまう事故が起きました。
この事故では、女児が亡くなっています。
本当に胸が痛い事件ですね。
ここで重要なのは、
フッ化ナトリウム(NaF)とフッ化水素酸(HF)は全く別の物質
だということです。

どちらにもフッ素が含まれています。
しかし、
「フッ素が入っている」という共通点だけで、同じような物質だと考えてはいけません。
フッ酸はガラスを溶かすほどの危険な物質です。
私が大学のころ、講習を受けたのち、先生の立会いの上で使用しました。
また、その部屋には軟膏がたくさん置かれており、何かあればすぐに使用するように言われました。
それほど危険な物質なのです。歯に塗られるとか、痛々しくて言葉になりません。
⑦ 「名前が似ている=同じ物質」ではない
この事故から学べることは、単に、
「フッ素は怖い!」
ということではありません。
むしろ、
化学物質は名前やイメージだけで判断してはいけない
ということです。

例えば、
水素と酸素からできている水「H₂O」と、
水素「H₂」や酸素「O₂」は、当然まったく別の物質です。
同じ元素を含んでいても、組み合わせや構造が変われば、物質としての性質は大きく変わります。
化学って、面白いですよね。
まとめ
今回は、歯医者でよく聞く「フッ素」について、化学の視点から解説しました。
ポイントは、
- 元素記号は「F」
- フッ素の単体は「F₂」
- 歯医者で使われる「フッ素」は、単体ではなく元素
- 歯医者で利用されるのはフッ素元素そのものではなく、フッ化物
- フッ化ナトリウム「NaF」は代表的なフッ化物の一つ
- NaFが水に溶けるとNa⁺とF⁻になる
- フッ化物は虫歯予防に役立つ
- 「フッ素が入っている」というだけで物質を判断してはいけない

ということです。
普段何気なく聞いている、
「歯医者でフッ素を塗る」
という言葉。
実は、その裏には「元素」「単体」「化合物」「イオン」といった、化学の基本が詰まっています。
こうやって身近なものを化学の視点から見てみると、意外と面白いものです。
化学って面白い。そして恐ろしい。
それでは、よい生活を!


コメント